大学受験というカテゴリーの中でもかなり異質なのが実技試験。デッサンや色彩、着彩など絵を描くことで評価を受けますから、他の学科とはまるで違います。
ただ、中身自体はそれほどかけ離れているわけではありません。大学受験の試験問題であるという理解を忘れなければ十分です。
実技試験の解答の正解と間違い
通常の学科試験とは違い明確な正解も間違いもないように見えますが、そこは特に悩む必要はありません。
重要なのは「問題に対する答えを提示する」という点のみであり、そこだけを考えていれば良いです。
試験官は当然絵のことを分かっていますし、受験生に素晴らしい作品を描くように求めているわけではなのです。基本的な技術はもちろんですが、問題に対する解答を行うだけの判断力や思考力を見るのがまず第一です。
その上で、個性なり独創性なり超絶な技巧なりが加点対象となるはずです。
つまり、普通に問題に向き合った作品を提出できれば正解で、できなければ不正解です。もちろん正解だから合格できるわけではないことも理解しなければなりませんが、それはまた別の話です。
問題に対して変化球で答えるか直球で答えるか
美大を受験しようという時点で、高確率で曲者の方が多いと思います。そうなるとやりたくなるのが、問題に対して変化球で答えること。
直球よりも変化球の方がインパクトを強めやすく魅力的に見えますが、採点を考慮すると変化球でも良いのか迷う所ですね。
結論的には、直球でも変化球でも構いません。重要なのは、それを見て問題に答えていると理解させることができるか、という点のみです。
ここで重要なのは、「理解させる」という部分。「理解してもらう」という受動的なものでなくてもよいのです。
変化球で押し込む場合は、「これが私の答えです!」という強い主張を必ずストレートに表現してください。技術や視点、世界観などはいくらでも変化をつけて構いませんが、言いたいことを婉曲にしてはリスクが高すぎます。それでは採点として不正解になりかねません。
繰り返しますが、最終的にはストレートに主張を表現してください。自己満足の婉曲さは試験では命取りになります。
画材の選択
鉛筆デッサンや水彩による着彩などは別ですが、色彩は比較的画材を自由に選べます。求める表現に必要な画材、あるいは最も得意な画材を選んでください。よほどでない限りは遠慮はいりません。さすがに自分の血などの特殊なものになるとやめておいた方がいいですが。
私自身は、アクリルとパステルと色鉛筆を併用していました。提出前にパステルを定借させるために定着スプレーを多めに使っていましたが、その音で周囲から振り返られた覚えがあります。とはいえ、そんなことは気にする必要もありませんし、必要なことを堂々と行いましょう。
時間一杯まで描くべきか
人によって、あるいは描き方によって制作スピードは変わります。しかし、人間不安になりやすいもので、周囲の受験生がまだ描いている時に筆を置くのは恐ろしく感じることもあるでしょう。
そんな事は気にせずに、というのが正論なのですが、そうはいってもという気持ちもわかります。そこで、私が見た同じアトリエの人の行動をご紹介します。
京都精華大学の着彩試験のことですが、その人は開始後30分で筆をおきました。残り時間はジッと自分の作品を眺めて、たしか3回ほど筆を入れた程度で提出していました。
結果は見事合格です。
実技試験では効率的な制作が重視されていますが、この場合はそれとは全く違うアプローチだったようです。あまりしっかりと作品が見えなかったのですが、対象を表現するために特徴的な部分のみを詳細に描き、他は想像で補わせるような疎密を使いこなしていました。
アトリエで描いている時からそういう傾向がある人でしたが、ここまでの完成度は見た覚えがありませんでした。
これは多少特殊な例ではあるのですが、こういう形でも受かることはあるので、自分で筆を置くタイミングを遅らせる必要がないことはお分かりいただけたかと思います。