鉛筆デッサンにおいて、ねり消しゴムは強力な道具です。
ねり消しゴムを使いこなせるかどうかで作品の質が大きく変わりますから、必ず使い方を覚えてください。
なお、保管方法は別ページ(「ねり消しゴムの保管方法」)に書いていますので、そちらを参照してください。
ねり消しゴムとは
ねり消しゴムとは、完全な固形ではなく粘土状に整形された消しゴムです。
皆さんも小学生や幼稚園の頃に消しゴムのカスを集めてこねたことがあると思いますが、それとは似てはいても全くの別物です。
プロが鉛筆デッサンで使えるレベルの品質で作られていて、デッサンでは必須のアイテムです。
ねり消しゴムの特徴
大きな特徴として、以下のような良い点が挙げられます。
- 形を自由に変えられる
- 力を入れ辛いため紙を傷めにくい
上記のメリットを活かした使い方は、次の項目「ねり消しゴムの使い方」で紹介します。
対して悪い点もあります。
- 力を入れて消しづらい
- 手についた鉛筆の汚れなどがねり消しゴム全体に付着しやすい
特に汚れが付着しやすい点は要注意です。
「気がついたら白いねり消しゴムが黒い固まりになっていた」ということはよくあります。
これは、練り消しがプラスチック消しゴムのように「使えば削れる」というものではなく、鉛筆の粉をねり消し自身に取り込むことで鉛筆の線を消しているために起こります。
必要な分だけちぎってから使うなど、ねり消しの使い方を分かっていればそこまで神経質になる必要はありませんから、使い慣れれば使用に問題はありません。
メーカーごとに違いがある
鉛筆と同様に、練り消しにもメーカーごとに違いがあります。
私はバニーコルアートの練り消しを愛用していますが、他の練り消しだと堅さや消し具合が微妙に違ったためでした。
多少極端な例ですが、あるメーカーの練り消しで消すと細かい粒が出てくるようなことがあり、そういう練り消しは残念ですがすぐに使用を止めて方が良いです。
ねり消しゴムの使い方
簡単に書くと以下の通りです。
- ある程度の大きさにちぎり取る
- 指で揉んで少し柔かくする
- 指でつまんだり、よじったりして先端を消しやすい形に加工する
- あまり力をいれないように消したい部分に当てて動かす
ねり消しゴムは体温程度の熱で柔らかくなりますが、保管してる状態ではそれなりに固く弾力のあるゴム状の固まりです。
ねり消しゴムの特性上ちぎることは簡単なので、実際に使う前に少量をちぎり、指先でこねておきましょう。買ったままの状態では大きすぎるので、適度な大きさを心がけます。
ある程度デッサンに慣れてくれば、無意識に手遊びのようにこねることもあるため、柔らかくすること自体にはそれほど意識は要らないかもしれません。
反対に固いままでないと使いに時もありますので、手で熱を加えないように触らず置いておくねり消しも用意しておいた方がよいでしょう。
プラッスチック消しゴムとは少し違い、粘り気を利用して鉛筆の粉をとるイメージがよいかもしれません。
「白い鉛筆」として使う
ねり消しゴムに限りませんが、消しゴムは「白い鉛筆」として利用できます。
「白い鉛筆」とはどういう意味かと言えば。
例えば、鉛筆で描いたデッサンで一度鉛筆で色を置いた場所に照り返しやハイライトを入れるため、白い線を描くように練り消しが使えます。
上記の説明図では、右の球体の下部に照り返しをいれています(デジタルの絵なので実際にここまで奇麗には消せませんが)。
この使い方をする際には、以下のように練り消しを加工します。
- 練り消しを少しちぎって丸める
- 一部を指で押しつぶし、平たくする
- 平たい先端を使って鉛筆の色を消す
先ほど書いたこととほぼ同じですが、平たくすることで部分を消す力を高めています。
潰しすぎると消せませんので、少し厚めにするのがコツです。
鉛筆は軽く使うのが基本
ここで重要なのは、鉛筆を力任せに使っていないことが前提である点です。
画用紙がヘコむレベルで力強く引かれた鉛筆の線は、簡単には消えないためです。
ハイライトや照り返しを上手く入れるためにも、鉛筆は軽めに「紙にのせる」感覚を基本とするように留意しましょう。
鉛筆を馴染ませ抑える
ねり消しゴムは消すだけではなく、余分な鉛筆の粉を取り除き馴染ませることもできます。
- 練り消しを少しちぎって丸める
- 全体を少し指で押しつぶし、饅頭のような形にする
- 消したい部分に、上から軽く押し当てる
これにより見た目には色が薄く、均質な状態に近づけることが可能です。
上記の説明図もデジタルなのでこうはならないのですが、イメージ的には右の球のように色を「抜く(ぼかすというほど便利ではありません)」ことで、鉛筆だけでは出しづらい質感や色の変化を作り出します。
ただし、この方法はかなり難しい上に使いどころが限られます。
注意点は以下の通りです。
- 鉛筆の粉を紙に刷り込んでしまい、後で消しにくくなる(ハイライトが入れ辛い)
- ねり消しを押し付けた際、ねり消しの形が分かるような後が残る
上記の問題があるため、加減や使いどころを覚えるまでは、色々と試して経験を積んでください。
自分の求める使い方ができれば、例えば何度も色を重ねずとも均質な色面を作ることができるようになります。
ただ、この方法は必須技術ではありませんから、必要がなければ練習せずともかまいません。