鉛筆を必ず使う必要性はないのですが、簡易に使えるので鉛筆を使った比率の測り方を説明します。
これは「測り棒」という道具の使い方と同じですので、自転車のスポーク(筆者はスポークを愛用していました)など棒状のもので代用可能です。
比率を測る重要性
絵の表現手段としては、自在にモチーフを変形させることが可能です。
しかし、美大受験のデッサンでは基本的には以下の部分が重視されますので、写実的な形を重視しなければなりません。
- 形を正確に写し取れる技術
受験のデッサンは絵を描く上での基礎を見るためのものですから、「私には美大で学ぶための基礎画力があります」と示すためにきっちり描きましょう。
ここで問題になるのは「どうやって形を正確に写し取るか」ですが、一般的には以下の方法が取られます。
- 鉛筆などでモチーフ各部の比率を測る
- 測った比率を元に、画用紙上に形を再現する
最初に比率を正確にとっていないと後で取り返しがつきませんので、受験デッサン開始時の大きな山場とも言える重要な工程です。
比率の測り方
ここからは鉛筆を使ってどうやって比率を測るのか、という具体的な方法を書いていきたいと思います。
1:鉛筆の持ち方と測る際に使う場所
まずは鉛筆の持ち方からですが、概ね以下の部分だけ気をつければ大丈夫です。
- 地面に対して垂直になるように鉛筆を持って動かす
鉛筆の持ち方が悪いと比率が正確に測れず、絵に狂いが生じてしまいます。
なお、測る時は以下の場所を使います。
- 鉛筆の先と、親指の先の間
比率を測るのが目的のため、鉛筆の先と親指の先の間を常に一定にする必要はありません。
比率を測る基準(基本的には比率の小さい方)に併せて、時には短く、時には長く持ってください。
2:モチーフ全体の縦横の比率を測る
鉛筆がもてたら、モチーフの縦横の比率を測ります。
鉛筆の長さやモチーフの大きさにもよりますが、概ね以下のように鉛筆を動かします。
- 鉛筆を立てて持ち、縦の長さ分だけ親指を下にずらす
- 親指の位置を変えずに、鉛筆を左方向に90°横に倒して、鉛筆の先とモチーフ左端を合わせる
- 縦に対して横が何等分になるかを測る
実際には「縦2等分の幅」や「縦3等分の幅」など、比率の基準を小さくしないと測れないことが多いのですが、上記のような大雑把な測り方でも、モチーフ全体が縦長なのか横長なのかがわり、構図を作りやすくなります。
こうして作った大きな四角形が、モチーフの大枠となります。
なお、画用紙の中央を出すような十字の補助線を薄く入れておくと、絵の全体が上下左右の一方に寄ったりしづらくなります。
ポイント
受験デッサンでは複数のモチーフが組み合わされていることがほとんどだと思いますが、それらを一塊として「モチーフと背景」という意識を持って測ってください。
測った比率を元に、画用紙の中央に配置するような四角になるように薄く線を引きます。
例えば花瓶に挿した花を描く時に、花びら一枚の比率をいきなり測るとかなりの確率で形が歪みます。
縦のどの程度を花瓶が締め、花のどの程度を花弁が締めるのかなど、最初は大きな固まりで捉えるようにすれば、歪みの軽減が可能になります。
3:大枠に接する位置を測る
大枠が取れたということは、モチーフの中の何かが上下左右に一番はみだしているポイントがわかっているはずです。
そのポイントを大枠に記せば、比率の詳細度があがりデッサンの形が歪みにくくなります。
具体的には、各辺のどの位置にそのポイントが来るのかを測って調べます。
例えば「上辺を1:3に別ける位置にモチーフの上側頂点がくる」などです。
4:さらに細部の比率を測る
ここまでくれば、後は同じ要領で他の場所も比率を測って点を打っていきます。
どこまで測るのかというのは難しいところですが、受験デッサンは形をとって終わりではないので、質感や色の描写時間を考えると、以下を基準に判断した方がよいでしょう。
- あなたが、ここまで詰めれば書き込みを進めて形が歪まない、と思えるレベルまで。
- あなたが、ここまで時間をかけると質感や色の描写ができない、と思える時間まで。
繰り返しますが、形をとって終わりではないので、自分の描き方と時間配分を考えて判断しましょう。
描き方によっては、モチーフの大枠さえとれればあとはほとんど測らずに描ける人もいますし、逆に細部まできっちり測る事で相当な精度で描く人もいますから、各自が自分で適切な状態を見つけなければなりません。
創作活動において手癖は問題になることがあるのですが、時間が限られる鉛筆デッサンでは効率的な描き方(=必勝の描き方)を意識しましょう。