鉛筆にはインクがありません。
ではどうして、線が引けて色が塗れるのか?
この点をまず頭と身体で理解しましょう。
鉛筆は「粉」である
鉛筆というのは「炭素」、つまり炭の固まりみたいなものです。
ですが、絵を描く時の重要なのは、「紙の上に鉛筆も用いた際の状態」です 。
鉛筆は固形である程度粘りのある状態から、紙表面との摩擦により粉状に崩れて紙に付着します。
あくまで「上に乗っている」状態であるため、インクのように染み込んだりしません。
粉は紙に刷り込まれる
紙は繊維でできており、つるつるの表面ではなく、糸が複雑に絡み合ったような状態です。
ここに鉛筆で線を引くとき、力加減によって紙の繊維を潰しながら繊維の中まで粉を刷り込むことができます。
この状態になると、紙繊維の中に鉛筆の粉が食い込んで取れず、消しゴムで消しても奇麗には消えません。
手や指の効果
指や手でこすったり抑えたりした場合、手に付いている皮脂や汗によって粉と紙の接着度合いが増します。
こうなると更に鉛筆は消えなくなります。
また、水分や油分で粉が伸び、きたない汚れとして絵に残ります。
鉛筆は粉であることを忘れない
デッサンをする際には、「鉛筆は粉である」という点を決して忘れてはいけません。
粉となる特性はデッサンの表現力向上には欠かせないためです。
あなたがどのような表現をするために、鉛筆の粉がどのような状態であるほうが都合がよいのか?
これを頭と身体で覚えておけば、はじめて描くモチーフでも概ねなんとかなります。
定着力の弱さを利用する
鉛筆を軽く持って線を引き、紙の上に鉛筆の粉がのっているだけにしておけば、その線はきれいに消せます。
これを利用して、デッサンで補助線やアタリを描きます。
また、粉が乗っている状態にとどめておけば、軽さや柔らかさの表現も可能です。
粉を紙に刷り込む
強い力で線を引けば、鉛筆の粉は紙に刷り込まれ、色も濃くなります。
これを利用して、光沢などキチっと堅い表現に必要な、締まりのある表現を行うことができます。
なお、この使い方では後で線が消せなくなる可能性が高く、計画的に使う必要があります。
最終的には身体で覚える
デッサンの試験では時間が勝負となります。
頭で考えることは決してムダではないのですが、反復練習により身体で覚えるべきです。
身体で覚えられれば、例えば頭で「瓶を描く!」と思うだけで、ある程度のレベルまで瓶の質感までも表現できてしまいます。
これは反射や自動筆記のような行為であり、スポーツ選手が個々の動作を意識せずにスムーズに連動させて行うことを同じ状態をさします。
繰り返しますが、頭で理解することは大切です。
その上で、身体に覚え込ませましょう。
地道に継続すれば、何かの切っ掛けである日突然技術が伸びて絵がうまくなることはよくあります。
地道に継続していなければ、切っ掛けがあっても活かせず、伸びは非常に小さなものとなるでしょう。